『JKマンガ家の津布楽さんは俺がいないとラブコメが描けない』

虚無なのに案外と本が読めません。一体なぜ。

 

 

『JKマンガ家の津布楽さんは俺がいないとラブコメが描けない』

 著者:水埜アテルイ イラスト:睦茸

 ☆2.8(謎の数字)

 

「一生アニメ観てやがれこのアニ豚ァ!」

 

 角川スニーカー文庫刊『毒舌少女のために帰宅部辞めました』著者の水埜アテルイ先生による新作。ひげ剃りデビュー組初の第二作らしい。めでてえ。ただこの作品はカクヨムコンの受賞作だそうで、書籍化から書下ろしの仕事が来たわけではないよう。まあweb出身作家さんはそういうスタイルが多いよね。最近の角川スニーカーは、大賞、ひげ枠共に続刊率が低すぎて心配になってしまう。

 

 本作はBL漫画家のヒロインが一般向けラブコメを書くため、恋愛映画レビュアーである主人公に恋愛指導を乞うていく学園ラブコメディ。ヒロインとの疑似恋愛を通じてグダグダうじうじ悩みながら、周囲に支えられて一歩を踏み出していく。要は疑似恋愛からくっついてくやつ。

 

 一巻完結作品として書かれているため、話は綺麗に終わっている。web掲載時点でも10万文字程度で話が締められており、今の出版事情に沿った戦略で書かれているようだ。

 

 話は綺麗に終わっているし、主人公が恋愛に踏み切れずにグダうじしているなど好きな要素はあったのだが、正直あまり楽しめなかった。前作主人公による地の文は、とにかく終始ボケ倒し、人との会話でもボケ倒し、そのコメディセンスが絶望的に合わず、内容のみを以てしても読書人生の最下層に沈むこととなった。今作ではその点真逆というか、主人公は特別ボケもしない代わりに、何を言おうが薄っぺらく見えてしまった。グダうじ展開もなんだかなあ、ただそれっぽい言葉を並べてるだけにしか感じられなくて、そもそも物語に全然入りこめなかった。そのわりに主人公以外のキャラは強烈で、会話が浮いていた。上に書いたセリフはヒロインが主人公の友人(二次元至上主義型のオタクで、リアル女性に対しても直接ヘイトを投げるやべえやつ)に向かって放ったもので、それまでのヒロインとの性格の豹変ぶりがおもしろかったシーン。